ばしょうの日常

社会人一年生のひとりごと

僕が山手線を1日で10周した感想

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僕が今まで色々(といっても鉄オタとしては全然だが)電車に乗ってきたなかで、おそらくもっともヤバイものは「山手線10周の旅」だと思う。他の人に言うと必ず引かれる。大回り乗車くらいなら興味を持ってくれる友達もこれだけはやりたくないと言うし、鉄道好きの友達だってそう言う。山手線を周回したことのある人なんてそうそういないと思うので、今回は僕が山手線を10周した感想を述べていきたいと思う。

 

 

1.山手線10周を計画した経緯

そもそもなぜこんな旅をしようと思ったのか。きっかけは鉄道系youtuberのスーツさんの動画である。

 

www.youtube.com

 

この動画は、朝疲れたスーツさんが山手線を寝床がわりに使うというものであるが、そもそも普通の乗車券では山手線を1周することはできないのである。しかしこの回では「都区内パス」というフリー切符を使い、これがあれば山手線を一日何周でもすることができるということを紹介している。

この動画を見た当時高校生の僕は「山手線、周回してみたい!」と思ったのである。もちろん苦行になることはやる前から覚悟していたのだが、どれでも一度やってみたいという欲の方が上回ったのである。

 

2.山手線を10周しているときに感じたこと

というわけで実際にやってみた。

そもそも山手線は、全長33.4kmの路線であり、駅数は30(10周したときにはまだ高輪ゲートウェイ駅が開業していなかったので29駅)、1周すると約1時間かかる。10周するとなると単純計算で10時間かかるので早くスタートする必要がある。750円のフリー切符を買い、僕は朝の8時半に新宿駅からスタートした。当時受験一年前ということもあり、一応英単語帳などを持ってきていた。

この企画をやる前に僕は事前に個人のTwitterで「今度山手線10周するんですけど、内回りと外回り、どっちの方がいいですか?」というアンケートをとった。その結果、内回りが40%、外回りが60%だったので、内回りを4周、外回りを6周することにした。

まずは内回りの4周を行う。1号車に乗車。今はなきE231系だった。新宿駅は山手線も特に混み、乗った時は座れず、ギュウギュウしていた。ただ僕はワクワクしていた。

その後、渋谷駅で人がごそっと降りていき、座れるようにもなった。が、僕は初めの一周は後ろから眺めを見ていたいと思い、ずっと立っていた。もう少しするとどんどん人が降りていき、品川駅を出た頃には一両にお客さんは5人ほどとなった。

そして電車はどんどん進んでいき、日暮里駅の辺りから混み始めた。この駅は常磐線の乗り換え駅だし京成との乗り換えも便利なのである。その後も少しずつ混み始め、池袋ではまた混雑してきたのである。

そうして新宿駅に帰ってきて、1周目が終わった。1周目は楽しかった。しかしこれから苦痛を感じるのである。

2周目が始まりはじめに感じたこと、それは

「あ〜またこの景色か」

ということである。そう、1周目で結構外を眺めていたため、大体の景色をもう覚えていてしまったのである。そして1周目と同じような混雑の変化で電車は進んでいく。ただ、一つだけ変化を見つけることができたのは、田端駅の近くにある新幹線の車庫の車両が変わっていたことだ。前と比べてE4系Maxが増えているとすぐにわかった。おそらく朝の通勤需要を拾うため上越新幹線から来たものだったのだろう。静かに留置されていた。それ以外は特に何も変わらず、2周目も終わり。ここで少し電車を降りてみた。2時間も乗りっぱなしだったので、電車の揺れがもうしみついていて歩いても何か違和感を感じた。もうおかしくなっている。

流石に一周ごとに書いていてはペースが遅くなるのでここからは省略して書いていく。

3周目。特に変化なし。だんだん駅の発車メロディを覚えてきてしまった。お気に入りは品川駅。

4周目。途中の品川駅で駅そばを食べた。写真は撮っていなかったが、なかなか美味しかった。

 

さて、内回りの4周が終わり、次は外回りの6周をやることとなる。ここで「最後に終わるのは新宿じゃなくて東京駅がいい」と思い、中央線で東京駅まで移動した。

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中央線のE233系。色がオレンジなだけですごい新鮮だった。

中央線は新宿→東京駅を15分ほどで結ぶ。山手線だとどっちから回っても30分くらいかかるのでかなり速いと感じた。景色も今までとは違ったもので新鮮だった。

東京駅についてからは、また山手線周回の時間である。

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来た。緑の悪魔だ。

なお、これから先はずっと1号車に乗っていた。

5周目。乗る方向が変わったので結構楽しかった。やっぱり渋谷で人が乗ってきて、日暮里のあたりで人は減った。サラリーマンの人も多くなってきた。

6周目。だんだん外が暗くなってきた。ここで「夜の全面展望も悪くないだろう」と思い、一番先頭から一時間くらいずっと立って景色を眺めていた。近くにいた鉄道好きの子供たちがお大回り乗車の話をしていた。こっちは同じ路線にずっと乗っているんだよ…。

6周目が終わり、東京駅で一旦降りてちょっと休憩し、7周目。実はこの先この旅が終わるまでずっと同じ電車に乗っていた。外はすっかり暗くなった。そして心は無になっていった。流石に品川あたりからも人は乗ってくるかなと思っていたがあまり乗ってこない。山手線の混雑状況がわかるアプリを開いてみると、一番後ろの11号車はかなり混んでいるらしい。車両によってこんなに変化があるのかと感心した。渋谷では例の如く人がのる。陽キャッキャしている人もいた。

8周目、もうやめたい。田端の新幹線がまた変化していて、Maxがいなくなっていた。帰りの通勤客のために走っているのだろう。単語帳を開いて勉強をずっとしていた。Twitterの方でも「何周目終わりました」的なツイートを繰り返していたら、友達がいいねしてくれた。希望が湧いた。

9周目。新橋駅のあたりから持ってきていたカロリーメイトを食べた。すごく美味しかった。

そしてラスト10周目になった。だんだん希望が出てきた。一日山手線に乗車して、大体どこの駅から混み始めるのか、何号車が混むのか、各駅の発車メロディはどうなのか、乗務員さんはどの駅で変わるのか、いろいろなことがわかった。山手線のおかげで社会が回っていることを実感し、偉大な路線だと感じつつ、最後の駅が近づいてきた。新宿、池袋、田端、少しずつ旅の終点が近づいていて嬉しいと思いつつも、寂しくなった。もうこの景色を見ることはできないと思うと、外を見ずに入られなかった。そして、「次は東京〜」というアナウンスを聞いて「終わるんだな」と実感した。電車がホームに入り、スピードが落ちていく。今まで乗ってきた電車に「ありがとう」と心で伝え、4周お世話になった電車を降りた。

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電車が離れていく時は少し寂しかった。

一日使ったフリー切符を改札に通し、丸の内口に出た。時計は21時を指していた。やっと改札に出れたのである。達成感はひとしおだった。

 

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KITTEの展望台からの写真。無料だし、いく価値は十分にある。

その後、東京駅近くの「KITTE」というところの展望台に行った。料金は無料である。高いビルに囲まれながら静かに佇む東京駅は美しいとしか言いようがない。

marunouchi.jp-kitte.jp

またこれは余談だが、その帰り、結局新宿駅に戻る必要があり、中央線に乗ったが、改めて中央線の偉大さを感じた。山手線だったら30分もかかるものを短時間で結んでくれるのだから。山手線と中央線はどちらも素晴らしい路線であった。

 

3.山手線を10周した後に感じたこと

今回の10周旅の総移動距離は一周33.4×10=334kmとなった。これは東京〜新潟を在来線で移動するのとほぼ同じ距離である(339km)。通過した駅数は一周29駅(当時)×10=290駅(やばい)、かかった時間は約12時間だった。

当時高校生だった僕は今回の旅のことを後日友達や先生に伝えたが、早速笑われた。「よくできたね〜俺は絶対やらないわ」とも言われた。確かにやっている最中は地獄だったと思う。1周目はまだ良かったが、4〜8周目くらいの時は相当辛かった。辞めたいと思った。それでも僕は電車に乗り続けた。「諦めたら試合終了」とはまさにこのことだったのである。

ただ、先ほども書いたが達成感は素晴らしい。人が今までほとんどやったことのないこと、しかも鉄道ファンでさえためらうような旅を僕は実現できたのだ。これは「自分にしかないもの」という自信になる。自分の経歴、経験となるのだ。終わればこの旅の後悔はなかった。やって良かったと思えた。自分的に誇れた。

他にも3つほど伝えたいことがある。まず1つ目だが、この経験は日常生活でも活きた。当時の僕はこの先も受験勉強があり、模試の成績がなかなか上がらなかったり精神的に追い込まれたりと辛い思いをしていたが、「自分はあの山手線を10周もしたんだ、これくらいできるはずさ!」と言い聞かせて勉強に注力することができた。馬鹿馬鹿しいと思うだろうが、本当である。

2つ目は、これも受験勉強の話になるが、山手線10周は勉強部屋としても使うことができると感じた。確かに混むし、ボックスシートではないので窓の下にペンなどを置くことはできないのだが、読み物に関しては捗るし、なんといっても揺れない。勉強部屋としては大回り乗車を使うこともよくあったが、大回り乗車の時は地方の路線にも乗るのでロングレール化(線路と線路の継ぎ目をなくすこと)されていない路線もありガタンゴトンという音を立てて揺れるのだが、山手線はロングレール化されておりかなり乗りごごちもいい。しかも車両は最新車両。さすがJR東日本の看板路線といったところだろうか。いちいち乗り換える必要もないし、乗車経路を考える必要もない。自分の勉強部屋に今までの大回り乗車だけでなく、この山手線も追加された。

3つ目は、改めて山手線という路線がすごいものであるかである。山手線の車両は一日中走っているのである。僕は10周しかしなかったが、電車はそれ以上、MAXだと1日18周くらいするものもあるらしい。しかも何日も走り続ける。首都東京都心を今日も回る山手線、彼ら無くして日本の経済は回らない。本当に感謝したいと思った。また、山手線の車両は結構整備がハイペースで行われるらしい。理由としては、毎日加減速を他の路線よりもたくさん繰り返しながら休む間もなく働き続けるからである。ブレーキやモーターの整備が普通の車両よりも必要なのだろう。

ちなみに、この旅のあと山手線に普通に乗ると「あれ、なんか乗る時間短くない?」「超余裕なんですけど」というふうに感じてしまう後遺症が残ってしまった。これには注意が必要だ(?)。

 

4.まさかの第二、第三回目・山手線10周

実はその後、受験勉強で2回も山手線10周旅を行った。2回目の10周旅では、既に山手線に乗った瞬間から「ああ、これね」という感じになった。1周目からすでに悟りを開いているのである。実際終わっても慣れた感じだった。3回目もほとんど同じ感想だった。もう辛くないと思ってしまった僕はもう狂ってしまっている。もちろん何度やっても他の人には笑われるし、理解されないことも多い。でもそれでいい。僕はやったんだ。

これまで10周した回数は結局3回で内回り12周、外回り18周の計30周をした。

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5.おわりに

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今回は山手線10周の旅について紹介した。今までこの旅の詳細を述べてきたことはなかったが、今回書いていてとても懐かしい気持ちがした。辛い旅ではあるが、この旅で自分が変わることができたのは事実である。今はちょっと外に出づらい感じだが、落ち着いてきたらまたやろうかなと思っている。友達を誘ってみたいが、きっとこないだろう。絶対。

また、もしこのブログを見てたとえ10周ではなくても「山手線を周回してみたい!」と思った人がいたら、僕は是非勧めたい。鉄道ファンの人もそうでない人も、今までやってこなかったことをすると新しい目線で見ることができると思う。その際は普通乗車券ではなく「都区内パス」というフリー切符を使うことをお忘れなく!普通にやったら不正乗車になってしまうので。周回をする皆様の健闘を祈る。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。