ばしょうの日常

社会人一年生のひとりごと

地味だけど気づいたら聴いてるアルバム、松任谷由実「紅雀」

こんにちは。

今回はユーミンこと松任谷由実のアルバム「紅雀」をご紹介します。

 

このアルバムは1978年3月に発売されました。

名義が松任谷由実となってから初めてのアルバムでした。

しかし、あまり売れなかったアルバムでもあります。おそらく原因は、シックで地味な曲調の曲が多いことでしょう。

私もこのアルバムをはじめて聴いた時は、正直あまり魅力には感じていませんでした。「わざわざ聴かないかな」と思ったこともありました。

しかし、何度か聴いていると、このアルバムの凄さが少しずつわかってきました。

穏やかな曲調と深い歌詞が織りなす世界観が、心を落ち着け、そばに寄り添ってくれます。

入ってすぐにわかる世界ではないかもしれないですが、必ず心に刻まれる、そんなアルバムです。

今回はそんなユーミン紅雀」をご紹介。

 

 

9月には帰らない

ゆったりとした曲からのスタート。

女性の「過去の思い出には戻らない、これからやるんだ」という決意を表した曲で、心穏やかながらも強い信念をもつ姿を見せてくれます。

 

ハルジオン・ヒメジョオン

ハルジオンとヒメジオンヒメジョオン)は花の名前。

風景描写が素敵。「川向うの街から 宵闇が来る 煙突も家並みも 切り絵になって」という歌詞は、いかにもユーミンらしい言葉遊びだなと思います。

この曲はいろんな解釈ができそう。変わりゆく私と、変わらない他。

変わりゆく私を止めてほしい、昔に戻れない悲しさ、そんな感情があるのかも、と僕は思っています。

 

 

私なしでも

ハイテンポな曲。個人的にかなりお気に入り。

彼氏と(夜明け前にこっそり?)別れた後、列車の中でしょうか。母性溢れる心配をしつつも、少しずつ離れていく街を見て、解き放たれ、自由が生まれるのを感じる。

この自由とはなんなのでしょうか。お互いに、また別の人と恋愛をできるという良い自由なのか、2人の間の拘束がなくなってしまうことをしみじみと感じているのか。

私なしでも幸せになってね、という言葉の複雑性を感じます。

最後の「枕木一つずつ 自由になるわ」というフレーズにその全てが詰まっているというのが。また素晴らしい。

 

 

地中海の感傷

バルセロナを舞台にした曲。

ユーミンの曲は、聞いたら景色を想像できるのが良いですよね。

曲調から雰囲気を感じて、歌詞で景色に色をつけていく。

 

紅雀

明るい。散歩のときとか聴くといいです。僕はこの曲を聴くと、気づいたら手が動いています。笑

周囲のことなど気にもせず、自由に前に向かっていきたい気持ちを雀にのせた曲。

 

 

罪と罰

歌詞をよく見るとエロティックで驚く曲。

事後ですかね。どんなに愛し合っても、ゴールに辿り着くことにはできない。けれど、彼への思いを止められない。

 

出さない手紙

すきな曲のひとつ。

「扱いづらい こんな女に ゆくあては 当分ないでしょう」という歌詞に共感しかないですね。私も「自分なんかどうせ」、という気持ちになったときには、「女」を「男」に脳内変換して聴いています。特に共感できるのは、自分がどういう人間だったのかを、別れてはじめて気づく。夢から覚めて、切なくなる。そんなところです。

好きだけど、愛を伝えたいけど、出せない。なぜなら、あなたの将来を変えることになってしまう。

だから、出さない手紙を書いて、自分の気持ちを受け止めようとしている。

むずむずする。

なんて深い曲なのでしょうか。

 

 

白い朝まで

歌詞自体は短いけど、詰まっているものが多い曲。

夜明け前、何かがあったのか、寂しさを感じてひとりになっている様子を描いている。

この寂しさは誰にも伝えられず、明るくなるまで待っている。

明るい時は人にいろいろ話せるのに、辛いときは自分で溜め込んじゃう。あるある。しかも実は明るい世界に引っ張ってくれるのを待っていたりする。僕なんですけどね。

 

LAUNDRY-GATEの思い出

友達との思い出を綴った曲。

ユーミンの「不変」「永遠」的要素が入ってるように感じます。

昔の思い出が、少しずつ消えていくような様子を描いていますが、そこにはなにか思いが乗っているような気がします。

 

残されたもの

大好きな曲。

秋から冬へ、厳しい季節に入る前に、寂しさを感じるような季節の変わり目を、自身の状況と反映させながら展開が進んでいく。

色々なものが離れていって、1人になってしまった、その辛さをひしひしと感じるような曲。

病んだとき、よく聴く曲でもあります。

「またひとりだけの 時が始まった」これが印象的。

うまくいかないとき、周りが敵に見えてしまうとき、この曲を聴くと自分の気持ちに寄り添ってくれるような気がするのです。

 

終わりに

今回は松任谷由実の「紅雀」を紹介しました。

言葉は悪いですが、正直、ユーミンにちょっと関心を持った人、「ルージュの伝言」や「やさしさに包まれたなら」をきっかけに聴き始めた人がこのアルバムを初めて聴くと「あれ?こんなに大人しかったっけ?」となってしまうかもしれません。

それくらい、このアルバムはある意味「特異なもの」なのかもしれません。

しかし、このアルバムがあったからこそ、後年のユーミンフィーバーが起きたのではないかとも言えるのでは、僕はそう思っています。

はじめにお伝えしたように、このアルバムは当時あまり売れませんでした。しかし、それは、ユーミンがブレイクするまでの、軌跡なのではないでしょうか。

この作品で描かれた落ち着きは、ユーミンが自分の世界を表現するための試行錯誤だったのかもしれません。

 

よければぜひ、松任谷由実紅雀」を聴いてみてください。