ばしょうの日常

社会人一年生のひとりごと

ユーミン史上最も暗くて重いアルバム「時のないホテル」

 

1972年にデビューしてから50年間もの期間、時代の第一線を走ってきたユーミンこと松任谷由実

そんなユーミンが1980年6月に発売したアルバムが、「時のないホテル」。

おそらくユーミンが出してきたアルバムの中で最も暗くて重い。私自身も聴くにもちょっぴり勇気や覚悟もいるような、そんなアルバムだ。

ただ、僕はこのアルバムの醸し出す雰囲気がとても好きで、何度もリピートしている。

今回はそんな、ユーミンの「時のないホテル」を紹介する。

なお、基本的には個人的感想を簡単に書いていく。詳しく知りたい方は、実際にアルバムを聴いたり、Wikipediaなどから情報を得たりしてほしい。

 

1. セシルの週末

不良少女がある男の人と出会って、少しずつ変わっていく姿を描く曲。

ユーミンの特徴である、写実的な歌詞とストーリー展開によって、情景を想像しながら聴くことができる。人気曲の一つで、50周年記念ベストアルバムにも収録されている。

 

この曲はハッピーエンドで終わる。が、ハッピーエンドで終わる曲はこのアルバムの中でこれしかない。つまり、完全に明るいのはここまでで、これ以降は暗い曲が続くのだ。

 

 

2. 時のないホテル

伴奏から暗い。そして歌詞もユーミンには珍しく難解(他の曲はスッと入るけれど、これは「一体なんなんだ…」となる)で、完全にストーリーを理解しようとするには時代背景を知らなければならない。

簡単には、時代から取り残されたホテルがテーマで、私はどこか夢の中でいさせてほしいという思いも感じるような曲。

最後の7拍子も怖さを助長している。

 

3. Miss Lonely

戦争で愛人を失った女性の歌。

悲しい。そして、辛い。

 

 

4. 雨に消えたジョガー

名曲。

白血病で死んでしまった彼氏を思う曲。彼はランナーで、女性は昔を懐かしみ、「一緒に生きたかった」と憶う、そんなストーリー。

曲調は静かだけど、詰められている想いは深い。

 

 

5. ためらい

ちょっとだけ明るくなる。

彼氏とのやり取りの「ためらい」を描く。ムズムズした感じとか。

 

 

6. よそゆき顔で

このアルバムで2番目に明るい曲。

結婚する彼女が、ちょっと気取ってる曲。「私が結婚して変わっちゃったら、その時は好きなだけ笑えばいい」、そう考える彼女。

結婚ではないけれど、昔の友達が今となっては別人になっている、なんてことがある。はたまた、自分が昔と変わってしまったってことも。変わりゆく人に離れてしまう人もいるけれど、それでも今を生きようと思えるような曲。

 

 

7. 5cmの向う側

恋愛もの。まだ学校に通っていた頃、彼氏より背が5cm高い女性は、人目を気にして彼氏に対して冷たくあたったりしてしまっていた。そんな後悔を唄う曲。

人目を気にして何か大きなものを失ってしまうこともあったなあ、としみじみとする。

 

 

8. コンパートメント

このアルバム、というよりも、ユーミン史上最も暗い曲。しかも7分もあり、ユーミンの曲で一番長い。そして、覚悟を持って聴かないといけない。

列車の中で睡眠薬を飲んで自殺を図る曲。死ぬまでに彼氏との思い出を回想したり、誰か私を助けて欲しいと思ったりしながらも、もうそんなことないんだと悟って堕ちていく人の姿が描写されている。そんな人が行き着く先は希望ではなく、荒野。

私はこの曲が結構好きで、特に精神的に病んだ時はよく聴いている。

 

9. 水の影

前のコンパートメントの続きとも思えるような曲。

諸行無常という言葉が適切であろうか。変わらないものはなく、いつかはみんな別れてしまうのだということを歌にしている。霧がかった白い世界で、コンパートメントでの死を浄化しているような、そんな印象を受ける。

 

 

総評

全体的に暗いのは確かだが、一曲一曲のストーリーが繊細で、とても聞き応えのあるアルバムとなっている。

興味を持った方は、ぜひ一度「時のないホテル」を聴いてほしい。